otakubeerlog

大田区に住むビールオタクのblog

お正月ビール

賀正正月を祝うという意味の言葉である。

元々お盆と同じく祖先の霊を祀る行事であった正月は、日本では新年を祝う行事へと変化していった。家の門前に門松を立て正月飾りをして、おせち料理を食べ、年賀状を送り、神社やお寺に初詣に出掛け、家に帰ってTVで駅伝を観る。書き初めを一筆したため、羽子板で羽根を突き、凧を上げて独楽を回して遊びましょう。時代の移り変わりで段々と行われなくなってくる習慣もあるが。

お正月にはお屠蘇がわりにお酒もたくさん飲まれる。日本酒の酒蔵も正月用の限定商品を出しているところが多い。「祝酒」という名前が付いていたり、その年の干支の動物や、七福神、鯛がラベルに描かれていたり、金箔入りの物まである。

筆者も今年の正月にはお屠蘇がわりの日本酒を一本飲んだ。それは今回の主題からは外れるので詳しくは触れないが、今年の干支にちなんだ名前の酒だった。そして、ぶっちゃけこの記事のネタ収集のためであるが、いっしょに「お正月ビール」も今年は出来るだけ飲んでみた。

 

日本の地ビールクラフトビールのブルワリーが毎年出しているお正月ビールはけっこうな数の種類がある。

実は、今回の文はというと、「新年を祝うビールがこんなに多いのは日本だけだ!」という線で書き進めて行こうかと考えていたのだけれど…。試しに「New Year」と付く海外のビールの名前を検索してみると、思ったより膨大な「New Year Beer」が見つかり、その線はあっさり引っ込めることとなった(笑)

名前に「New Year」が入るビールの中では有名どころな感じのAnchor Brewing / Merry Christmas & Happy New Year(Our Special Ale)(USA)や、Hancock Bryggerierne / Merry Christmas Happy New Year(Denmark)がそうなように、「Happy New Year」は「Merry Christmas」とセットになっているものが多かった。クリスマスカードに書かれるあいさつの決まり文句と同じだ。英語での「Happy New Year」は主に年の暮れに交わされる言葉で、「明けましておめでとう」よりもどちらかというと「良いお年を」の方に近いようだ。だから、「New Year Beer」も日本の「お正月ビール」とは若干ニュアンスが違うのだとは思うが。

※ちなみに多かった「New Year Beer」の名前は「Hoppy New Year」。これは、いかにもホッピーな(ホップの効いた)ビールを好むクラフトビール界隈ならではで、これから新年のあいさつの定番になりそう?(笑)

何にせよ、日本という国は世界の中でも新年を祝うビールが多く作られている方の国だというのは確かじゃないかと思う。中国台湾韓国ベトナムなどの旧正月文化圏の国々でも、これからクラフトビールシーンがもっと盛り上がれば「春節ビール」や「テトビール」が増えてくるかも?

 

以下は、筆者が今回の正月期間に飲んだ「お正月ビール」をざっと紹介。

賀正ビール

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賀正ビール


神奈川県厚木市のブルワリーサンクトガーレン賀正ビール

元旦にさっそく飲んだ。写真は初日の出の陽光を浴びている賀正ビールのボトルだ。ボトルのラベルはよく見ると今年の干支である牛の白黒の毛並みのデザインだ。今年のサンクトガーレンの賀正ビールは、柚子が入ったフルーツウィートエール。小麦の甘味があって、柚子の果汁と香りが豊かでした。

ちなみに、サンクトガーレンの昨年の賀正ビールはアンバーエールで、これはヨーロッパでのアンバー(琥珀)は幸福を招くもので、琥珀を贈るのは「幸福を贈る」意味を持つからだそうです。

 

賀正エール

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賀正エール

茨城県那珂市にある木内酒造常陸野ネストビール賀正エール常陸野ネストビール公式の英語名ではCommemorative Aleであり、なるほど「賀正」を英語で言い換えると、Commemorative(記念)にするのかと参考になる。今年はJR品川駅構内にある常陸野ブルーイング品川 Beer& Cafeで飲んだ。

賀正エールはアルコール度数8%と、「お正月ビール」の中ではかなり強い部類に入る。麦芽とホップを大量に使用したベルジャンストロングエールBelgian Strong Aleにバニラやコリアンダー、シナモンなど5種類のハーブとスパイスを加えた冬季限定醸造のビールだ。

賀正エールを筆者は地ビールクラフトビールを飲み始めた数年前から毎年飲んでいて、とても思い入れのあるビールだ。一年ごとに賀正ビールに再会するたび、一年間いろんなビールを飲んできた経験のフィードバックから、去年までとは違った新たな発見を賀正エールに出来るのだ。

 

醸造 インディアペールラガー

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醸造 インディアペールラガー

静岡県伊豆のベアードビールBaird Beer醸造 インディアペールラガー

大量にホップを効かせたペールエールIPAと言うのだが、初醸造はベアードがIPAのレシピのものをラガー酵母で発酵させて仕上げたインディアペールラガーIndia Pale Lager(IPL)だ。

醸造は正確にはベアードのマンスリーシリーズビールなのだが、筆者的に初醸造は毎年年の始めにできるだけ飲みたい一本なので「お正月ビール」に加えてみた。

今年はベアード直営タップルームのバーベキュー料理が美味いBashamichi Taproomで飲んだ。いっしょに頼むフードメニューは、丑年なのでもちろんビーフブリスケットで!

 

Happy New Beer 2021

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Happy New Beer 2021

宇都宮の道の駅に醸造所があるろまんちっく村クラフトブルワリーは、数年前から毎年、宇都宮出身の双子のラッパーユニットP.O.PとコラボしてHappy New Beer醸造している。筆者が飲んだHappy New Beerはここ2年の物だが、どちらも宇都宮産の柚子を使ったIPAだった。2020ver.はアルコール度数が8%だったが、今年の2021ver.はアルコール度数が6.5%で、どちらも飲みやすいことに変わりはないが今年のver.の方が若干酔いが回りにくい。

今年Happy New Beerを飲んだのは東京都大田区鵜の木のビアバーBEER STAND Stoop。写真のグラスといっしょに写っているのは、Stoopのロゴの猫と今年の干支の牛があぶない刑事風にグラサン掛けているデザインのStoop年賀バッチである。

ちなみに、ろまんちっく村と同じ宇都宮のブルワリーBlue Magic Utsunomiya Brewery呑み初めゴールデンという「お正月ビール」を作っている。

 

その他

写真は無いがその他に飲んだ「お正月ビール」は、黄桜酒造のLUCKYシリーズのLUCKY COW。今回LUCKY COWを買ってみて、一昨年売っていたLUCKY BOARと昨年売っていたLUCKY MOUSEもそれぞれの年の干支の動物の「お正月ビール」だったことに今更気づいた(笑)

栃木のうしとらブルワリーHoppy 牛 Year!も飲んだ。ホップの効いたペールエールだった。考えてみれば今年と来年はうしとら(丑寅)の年だ。うしとらブルワリーにとって重要な2年間になるのだろう。

 

その他に、手に入らなくて飲んでいないビールではヤッホーブルーイング福ビールも「お正月ビール」に挙げられるだろう。あと思い付くのはTwo Rabbits BrewingNew Year Rice Aleなど。筆者が把握していない「お正月ビール」もまだいっぱいありそうだ。

 

あとは地ビールクラフトビールではなく大手ビールなのだが、箱根駅伝の筆頭スポンサーであるサッポロビールサッポロ黒ラベルも「お正月ビール」と言えば「お正月ビール」と言えるのかも知れない。

 

さて。「お正月ビール」は当たり前のはなしだがやはり縁起の良い名前のものばかりだ。それなら「お正月ビール」をいっぱいのめばそれだけ福もたくさん付きそうなものだが、残念ながら「お正月ビール」に限らず縁起物というものは、そんなにご利益を期待するものでもないのだと思う。去年一年はご存じの通りああいった年だった。だったら去年の始めに良い一年になることを願った多くの人々にとって、一体何だったのという話しになる。そして新年早々一都三県に非常事態宣言が発令されるというここ最近。

どちらかと言えば、「お正月ビール」とは、気持ちを新たにしてまた新しい一年を送るために飲むのが、と出ました!