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大田区に住むビールオタクのblog

京都とその周辺ビール巡りの旅 2020年10月④「四日目。雨の奈良」

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奈良の道路を歩く鹿

10月17日(土)

「寒っ!」

この日は確か全国的に天気が良くなく、京都も例に漏れず雨の一日。おまけに冬のように肌寒かった。

 

この日は奈良へ。奈良までは近鉄線を使った。土曜の午前中の近鉄京都駅のプラットホームは、天気が悪いせいもあってか、人もまばらで寂しげだった。

京都から南下し奈良県に入ると、車窓から見える風景は田園地帯が増えてくる。平城京跡の史跡も近鉄線沿いからは見える。古都の跡といっても、朱雀門などいくつかの復元された建造物があり、残りは建物や柱の土台の跡が残っているだけ広い公園だ。現在復元作業中の建造物もあるようで、覆いが被せられているのが見えた。

 

近鉄奈良駅はプラットホームが地下にある。地上に上がると駅前には、東大寺の建立に貢献した行基という僧侶の銅像が建っている。さすが奈良。「仏教都市」といった趣だ。京都も多くの仏教寺院がある都市だが、様々な時代に成立した宗派の寺院が混在している京都に比べ、奈良は平安時代以前の奈良仏教の宗派でまとまっているせいか、街の表情もどこか静かで落ち着いた雰囲気という印象だ。

駅前の商店街を抜け、興福寺の境内や猿沢池という小さな池の辺りまで来ると、あちこちを鹿が歩いている。今年はコロナ禍で、鹿せんべいを与えてくれる観光客も激減してしまっているはずで、鹿たちも痩せ細ってしまっているのかなと思っていたがそれほどでもなかった。どうやらそこいらに生えている芝を食べるようになったらしい。鹿本来の食習慣に戻ったというべきか。

メスの鹿は「メェェ~」と羊のように鳴く。オスの鹿は近づいていくと「コォォ」と空咳のような声を出す。オスのほうはもしかしたらちょっと怒っていたのかもしれない。

鹿たちは普通に道路も歩いているが、車が来ると歩道寄りにちゃんと移動する。鹿は鹿なりに空気を読んで交通ルールを守っているようなのが見ていて面白い。

なら麦酒 ならまち醸造

さて。筆者はビール巡りの旅の最中なので、奈良にもお寺や鹿を見に来たわけではなく、もちろんビールを飲みに来た。

奈良クラフトビールマップという便利なミニ冊子がある。奈良県内のブルワリーの情報と、奈良市街のクラフトビールを扱っているバーやレストランの場所がわかる簡易地図が載っている。イラストレーターのTOAさんがデザインされていて、可愛らしい表紙が目印。全国のビアバーで置いているところもあるはずだ。この日も奈良クラフトビールマップをありがたく活用させていだだいた。

奈良市街にもう一軒あるブルワリーゴールデンラビットビールとも迷ったが、なら麦酒 ならまち醸造というブルワリーの醸造所に行ってみることにした。ならまちというのは興福寺の南に位置する、元興寺を中心とする地域の通称で、江戸時代末期からの町家の雰囲気が残る風情のある町並みの中に、なら麦酒の醸造所はある。醸造所に併設して、ガラス張りの外観で中は清潔な白木のカウンターとテーブルのきれいなタップルーム麦舎がある。

なら麦酒 ならまち醸造タップルームで飲んだビールは、定番ビールの奈良産大和ほうじ茶を副原料に使用したならまちエールというペールエールと、限定ビールの桃と紅茶のセゾンというのをいただいた。フードメニューには何と柿の葉寿司もあって、面白いので頼んでみた。ビールとの相性もなかなかだった。

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柿の葉寿司と桃と紅茶のセゾン

 

<なら麦酒 ならまち醸造所 麦舎の基本情報>

住所: 奈良県奈良市紀寺町956-2

電話番号: 0742-95-9700

アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩約15分

営業時間: 11:30-20:00 木曜休

 

奈良醸造Nara Brewing Co.

この日はもう一か所、郡山駅が最寄駅の奈良醸造を訪ねた。「郡山」といってももちろん福島県の郡山ではなく、 奈良県大和郡山市の方だ。

今回は近鉄奈良駅から一度京都方面に大和西大寺駅まで戻り、そこから乗り換えて近鉄郡山駅へ向かったが、JRを使うと大和路線で一駅で行ける。京都から奈良へのクラフトビール観光は、電車で向かう場合、JRを使うか近鉄を使うかというのは一長一短というところだ。奈良市街のビアスポットだけまわるのなら、東大寺興福寺奈良公園により近い近鉄を使った方が便利で、奈良醸造目当てで郡山だけに行くのなら、JR郡山駅の方が奈良醸造に近いのでJRに乗った方が良いのかもしれない。今回の筆者みたいに一日で両方まわる場合は?どのみちJR郡山からも近鉄郡山からも、奈良醸造まではバスを利用しなくてはならない距離があるので、結局JRと近鉄、どちらでも良いと思う。お好みで。

 

近鉄郡山駅で降りる。駅周辺に商店街がある大きな駅なのだが、構内にプラットホーム間を渡る階段が無いせいか、どことなくローカルな雰囲気のある駅である。

奈良醸造へは、駅前のバス停から15分ほどの間隔で出ているイオンモール大和郡山行のバスに乗る。奈良醸造イオンモールの隣にある工業団地のような場所の中にあるのだ。イオンモール入口のバス停で降り、ショッピングモールの広い駐車場の中を突っ切って5分ほど歩くとたどり着く。

 

奈良醸造株式会社Nara Brewing Co.は2018年に醸造を開始したブルワリーだ。代表の浪岡安則さんは京都醸造でのビール醸造のキャリアのある方で、奈良醸造の作るビールのラインナップには、やはり京都醸造と同様にベルジャンスタイルとアメリカンスタイルのビールが多いが、サワー(酸っぱい)系のビールや、ヨーロッパの他国のスタイルなど、作るビールの幅はむしろ京都醸造よりも少し広い印象もある(京都醸造も近年いろんなスタイルを醸造するようになってきたが)。

奈良醸造のビールは関東でも、ビアバーで樽生を入れてるところは結構多く、飲む機会はなかなかある。奈良醸造の面白いところは各樽生のビールごとに、スタイリッシュなデザインのイメージカード(正確にはセールスシートというらしい)を配布していることだ。筆者も頻繁に通うビアバーもよく奈良醸造の樽生をつないでいて、カードのデザインを眺めながらビールを飲むという行為を楽しんでいる。

 

奈良醸造は通常、併設のタップルームを毎週土日だけ営業していて、そこで作り立てのフレッシュな樽生のビールを飲むことが出来るのだが、新型コロナウイルスの影響でタップルームでの樽生ビールの提供を休止していた。筆者も今回の旅行では奈良醸造タップルームで樽生ビールを飲むことは諦めていたのだが、奇跡というものは起きるもので、何と筆者が訪問する予定のこの日から、屋外限定で樽生ビールの提供を再開すると直前に発表されたのだった!ただし、屋根の無い屋外なので雨天の場合は提供中止…。そして、この日は大雨…。郡山に着く直前まで雨が上がることを祈っていたのだが、それも空しく雨が止むことはなかったのだった。

ですが、普段美味しく飲んでいるビールがどんな場所で作られているか、実際足を運んで目で見てみることというのは、充分貴重な体験。この日も奈良醸造ではタップルームで樽生ビールこそ飲めなかったものの、良いデザインのグラスと、樽生ビールを詰めてもらったクラウラー(樽生ビールを持ち帰る用の缶)を買って帰ることが出来て満足でした。

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雨の奈良醸造

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奈良醸造のセールスシートとグラス

<奈良醸造の基本情報>

住所: 奈良県奈良市北之庄西町1-8-14

電話番号: 0742-64-0108

アクセス: イオンモール大和郡山バス停から徒歩約5分

タップルーム営業時間: 土日13:00-18:00(現在は屋外限定)